皮膚疾患

犬のアレルギー検査の結果の見方|陽性でも原因とは限らない理由を獣医師が解説

きゃん

「動物病院でアレルギー検査を受けたら、結果の用紙に「+」がたくさん並んでいた」「陽性の食材が多すぎて、何を食べさせたらいいのかわからない」——そんな不安を抱えている飼い主さんは多いです。

✅ 結論

アレルギー検査の結果は、「原因を決める答え」ではなく「原因を探すための手がかり」です。

「陽性」と出た食材が、そのまま症状の原因とは限りません。原因を確かめる決め手になるのは、実際の症状と、フードを切り替えたときの体の反応です。

この記事では、現役の獣医師が、愛犬の検査結果の読み方と、結果を受け取ったあとにやることをわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 愛犬が受けた検査の種類と、結果の用紙の読み方
  • 「陽性」でも原因とは限らない理由
  • 「アレルギー検査は無駄」と言われるわけと、役に立つ場面
  • 結果を受け取ったあとにやること3ステップ

まず確認|愛犬が受けたのはどの検査?

犬のアレルギー検査には、主に2つの種類があります。

どちらを受けたかによって、わかることと結果の読み方が変わるので、まずは用紙を手元に置いて確認してみてください。

💡 「クラス0〜6」の結果を見ている方へ
「クラス0〜6」で示される結果は、人(飼い主さん)が犬アレルギーかどうかを調べる検査のものです。愛犬の検査とは別のものなので、この記事の読み方は当てはまりません。人の検査結果については、検査を受けた病院の医師に相談してください。

① IgE検査(すぐに症状が出るタイプを調べる)

血液の中にある「IgE抗体」という、アレルギーの“見張り役”を調べる検査です。

ダニ・カビ・花粉などの環境の物質や、食べ物に対して、見張り役がどれくらい反応しているかを調べます。

主に、アトピー性皮膚炎の治療方針を考えるときに使われます。

② リンパ球反応検査(遅れて症状が出るタイプを調べる)

血液の中の「リンパ球」という細胞が、食べ物に反応するかを調べる検査です。

食べてから時間がたって症状が出るタイプのアレルギーを調べるもので、主に食べ物アレルギーが疑われるときに使われます。

用紙のどこを見ればわかる?
  • 検査名の欄に「IgE」「アレルゲン特異的IgE」とあれば → IgE検査
  • 検査名の欄に「リンパ球反応」とあれば → リンパ球反応検査
  • わからないときは、検査を受けた動物病院に「どの検査を受けましたか」と聞けば確実です

結果の読み方|「−」「1+〜4+」「陽性」の意味

結果の表し方は、検査会社によって違います。

まずは用紙の下や裏にある「判定基準」の表を探してみてください。ここでは、よく使われている検査を例に読み方を紹介します。

IgE検査の例(富士フイルムVETシステムズの場合)

富士フイルムVETシステムズのIgE検査では、反応の強さを数値で測り、次の5段階で示します。

判定反応の強さ(数値)意味
−0〜10陰性(反応は見られない)
1+11〜25反応あり(+の数が多いほど、血液中の反応が強い)
2+26〜50
3+51〜150
4+151以上

出典:富士フイルムVETシステムズ「アレルギー検査」(2026年10月時点の判定基準)

食べ物は牛肉・豚肉・羊肉・鶏肉・鶏卵・魚肉・小麦・コーン・米・大豆・ミルク・乳清の12項目、環境はダニ・カビ・虫・花粉を調べます。

リンパ球反応検査の読み方

リンパ球反応検査は、食べ物ごとに「陽性」「陰性」などの判定や数値で示されます。

区分の名前や数値の区切りは検査会社によって違うので、用紙の判定基準の表で確認してください。

「+が多い=症状が重い」ではない

ここがいちばん誤解されやすいポイントです。

+の数や数値が示しているのは、血液の中で、その物質に対する反応がどれくらい見られたかです。

「症状がどれくらい重いか」や「その食材を食べたら必ず症状が出るか」を示しているわけではありません。

「4+」が並んでいても、その食材を食べて何も症状が出ない子はいます。逆に、すべて「−」でも食べ物アレルギーの子もいます。数字だけで一喜一憂しなくて大丈夫ですよ。

「陽性」でも原因とは限らない理由

検査結果だけを見て、すぐに対策を決めてはいけない理由が2つあります。

数値だけで判断しない理由2つ

理由1|数値と実際の症状は一致しないことがある

体がある物質を「知っている」状態になっていても、症状が出ていないことはよくあります。これを「感作(かんさ)」といいます。

実際に、皮膚の症状がない健康な犬でも、IgE検査で陽性が出ることがわかっています。

反対に、+が少なくても強いかゆみが出る子もいます。数値は「体の準備状態」、症状は「実際に起きていること」と考えてください。

理由2|「偽陽性」「偽陰性」がある

検査には、反応していないのに陽性と出てしまう「偽陽性(ぎようせい)」と、アレルギーなのに陰性と出てしまう「偽陰性(ぎいんせい)」があります。

犬の食べ物アレルギーについて研究をまとめた報告でも、血液検査だけで原因の食べ物を正確に言い当てるのは難しいと結論づけられています。

🩺 獣医師メモ:獣医皮膚科の国際的な指針では、IgE検査は「アトピーかどうかを診断する」ための検査ではなく、症状から診断がついたあとに「治療の対象を選ぶ」ための検査と位置づけられています。

「アレルギー検査は無駄」と言われる理由と、役に立つ場面

ネットで「犬のアレルギー検査は無駄」「意味ない」という声を見て、不安になった方もいるかもしれません。

獣医師の立場から言うと、「検査だけで原因を決めようとすると遠回りになる」という意味では正しく、「まったく役に立たない」という意味では誤解です。

「無駄」と言われる理由

こんなときに「無駄だった」と感じやすい
  • 陽性の食材を抜いたのに、かゆみが変わらなかった
  • 陰性だったのに、実際には食べ物が原因だった
  • 陽性の項目が多すぎて、食べられるものがないと感じた

どれも「陽性=原因」「陰性=安心」と受け取ってしまったときに起こりやすいすれ違いです。

それでも役に立つ場面

検査結果が役に立つ使い方
  • 切り替えるフードの候補を絞る:反応の強い食材を避けて、試すフードを選ぶ手がかりになる
  • 季節によって悪化するかゆみの原因を推定する:花粉やダニなど、環境の対策の優先順位を決めやすくなる
  • 減感作療法の対象を選ぶ:原因の物質に体を少しずつ慣らしていく治療で、どの物質を使うかを決める

検査結果は「答え」ではなく「地図」のようなものです。地図を見ながら、フードの切り替えという「実際に歩いて確かめる作業」をすることで、はじめて原因にたどり着けます。

結果を受け取ったら次にやること3ステップ

結果を受け取ったら、次の3ステップで進めるのがおすすめです。

ステップ1|陽性の食材と、今のフード・おやつの原材料を照らし合わせる

まずは、陽性だった食材が今食べているフードやおやつに入っていないかを確認します。

たとえば鶏肉が陽性なら、「チキン」「鶏肉」だけでなく、「チキンエキス」「家禽類」「肉類」といった表記にも注意が必要です。

鶏肉が陽性だった場合の注意点は、犬の鶏肉アレルギーの記事でくわしく解説しています。

ステップ2|フードを切り替えて8週間ようすを見る

食べ物アレルギーを確かめるいちばん確実な方法は、これまで食べたことのないたんぱく源のフード(または、たんぱく質を細かく分解したフード)に切り替えて、症状が落ち着くかを見ることです。獣医療では「除去食試験」と呼ばれます。

症状が落ち着くまでには時間がかかるので、最低8週間は同じフードを続けてください。この間は、おやつ・ガム・味つきの薬なども獣医師と相談して止めるのが原則です。

検査結果は、このとき「どのフードを試すか」を選ぶ手がかりとして使います。フードを変えても良くならないときは、アレルギーフードが効かない理由の記事も参考にしてください。

ステップ3|環境の項目が陽性なら、掃除とシャンプーで減らす

ダニや花粉などの環境の項目が陽性で、症状とも合っている場合は、身のまわりの対策をあわせて進めます。

環境の対策の例
  • ダニ:寝床やタオルをこまめに洗い、床やソファに掃除機をかける
  • 花粉:散歩のあとに、体や足先をぬれタオルでやさしく拭く
  • シャンプー:皮膚に付いた物質を洗い流す。頻度は週1〜2回が目安だが、皮膚の状態に合わせて獣医師と相談

環境のアレルギーとかかわりの深いアトピー性皮膚炎については、犬のアトピー性皮膚炎の記事でくわしく解説しています。

3つのステップのうち、いちばん迷いやすいのがフード選びです。

犬のアレルギー対策ドッグフードの選び方とおすすめ10選
🎯 切り替えるフードに迷ったら
犬のアレルギー対策ドッグフードの選び方とおすすめ10選

鶏肉・牛肉が陽性だった子向けの魚系フードや、原因がしぼりきれない子向けの分解タンパク食を、獣医師が原材料で比較しています。

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獣医師に聞いておきたい質問リスト

検査結果の説明を受ける時間は、意外と短いものです。

聞きたいことをメモして持っていくと、結果をその後の対策にしっかりつなげられます。

診察のときに聞いておきたいこと
  1. この結果は、今の症状と合っていますか?
  2. 食べ物と環境、どちらの対策を先に始めるべきですか?
  3. フードを切り替えるなら、どのたんぱく源がおすすめですか?
  4. 切り替えている間、おやつや薬はどうすればいいですか?
  5. どのくらい続けて良くならなければ、次の方法を考えますか?

結果にかかわらず受診したいサイン

次のようなサインがあるときは、検査結果の数値にかかわらず、早めに動物病院を受診してください。

こんなサインはすぐ受診を:6つのチェックポイント

これらは「今、体が困っているサイン」です。数値が低くても症状が強いときは、ためらわずに相談してください。

よくある質問

Q
犬のアレルギー検査は無駄ですか?

検査だけで原因を決めようとすると遠回りになることがありますが、無駄ではありません。

フードを切り替えるときの候補を絞ったり、季節性のかゆみの原因を推定したりする手がかりになります。結果は症状とあわせて、獣医師と一緒に読み解くのがおすすめです。

Q
検査の費用はどれくらいかかりますか?

検査の種類(IgE検査・リンパ球反応検査)や調べる項目の数、動物病院によって大きく変わります。

両方の検査を受けると費用が高くなりやすいので、受ける前に見積もりを確認しておくと安心です。

Q
結果が出るまで何日かかりますか?

多くの場合、血液を検査会社に送って調べるため、結果が出るまで1〜2週間ほどかかります。

くわしい日数は、検査を受ける動物病院で確認してください。

Q
ペット保険は使えますか?

保険会社や契約しているプランによって扱いが違います。

加入している保険会社に、アレルギー検査が補償の対象になるかを事前に確認しておきましょう。

Q
毛や唾液で調べる検査キットは信用できますか?

おすすめしません。毛や唾液を使う検査では、アレルギーのある犬とない犬を見分けられなかったという研究報告があります。

検査を受けるなら、動物病院で血液を使う検査を受けてください。

Q
薬を飲んでいても検査は受けられますか?

ステロイドなど、かゆみを抑える薬の中には、検査の結果に影響するものがあります。

飲んでいる薬は必ず事前に獣医師に伝えて、検査の時期を相談してください。

Q
「クラス2」「クラス6」とは、どういう意味ですか?

「クラス0〜6」は、人(飼い主さん)が犬アレルギーかどうかを調べる血液検査の結果の表し方です。愛犬の検査とは別のものです。

人の検査結果について不安がある場合は、検査を受けた病院の医師に相談してください。

まとめ

この記事の要点
  • 犬のアレルギー検査には、主に「IgE検査」と「リンパ球反応検査」の2種類がある
  • 結果の表し方は検査会社ごとに違う。まずは用紙の「判定基準」を確認する
  • +の数や数値は「血液中の反応の強さ」で、症状の重さではない
  • 「陽性」でも原因とは限らず、「陰性」でもアレルギーのことがある
  • 結果はフード選びの手がかりにして、フードの切り替えで実際の反応を確かめる

検査の結果を見て不安になった飼い主さんの気持ちが、この記事で少しでも軽くなっていたら嬉しいです。

数字はあくまで手がかりです。かかりつけの獣医師と一緒に、愛犬に合う対策を一つずつ確かめていきましょう。

参考文献

  1. Hensel P, Santoro D, Favrot C, Hill P, Griffin C. Canine atopic dermatitis: detailed guidelines for diagnosis and allergen identification. BMC Veterinary Research. 2015;11:196.
  2. Mueller RS, Olivry T. Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (4): can we diagnose adverse food reactions in dogs and cats with in vivo or in vitro tests? BMC Veterinary Research. 2017;13:275.
  3. Olivry T, Mueller RS, Prélaud P. Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (1): duration of elimination diets. BMC Veterinary Research. 2015;11:225.
  4. Coyner K, Schick A. Hair and saliva test fails to identify allergies in dogs. Journal of Small Animal Practice. 2019;60(2):121-125.
  5. 富士フイルムVETシステムズ「アレルギー検査」判定基準・検査項目(2026年10月確認)
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獣医師 / ペット健康ノート 運営者
動物病院で犬・猫の診療を続ける現役獣医師。皮膚のかゆみ・赤み・外耳炎の相談を毎日受けています。犬の健康管理アプリの監修も担当。診察室で伝えきれない「食事でできること・受診の目安」を、論文をもとにわかりやすくまとめています。ラグドールと暮らしています。
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