犬がやたら体をかく・足を舐める…食べ物アレルギーが理由かも?現役の獣医師が部位ごとに解説
「最近うちの子、やたら体をかいてる…」
「足をなめる・床に顔をこすりつける行動が増えた気がする」
そんなとき、原因のひとつとして考えたいのが「食べ物のアレルギー」です。
この記事では、現役の獣医師として毎日皮膚のお悩みを診ている立場から、できるだけわかりやすくお伝えします。
- 食べ物のアレルギーとは
- 症状が出やすい5つの部位(耳・足先・お腹・顔・わきの下)
- アトピーとの見分け方(3つのポイント)
- 血液検査を過信してはいけない理由
- 食べ物を変えるテスト(除去食試験)の正しい進め方
食べ物のアレルギーとは
「食べ物のアレルギー」とは、特定の食材に対して体の防御システムが過剰に反応してしまう状態です。
皮膚にかゆみが出るのが最も多く見られる症状で、ひどいときは耳・足先・お腹など複数の部位に同時に現れます。
「体の防御システム」は、「免疫(めんえき)」といいます。
ばい菌やウイルスをやっつけるための仕組みですが、アレルギーではこれが食べ物に対して過剰に働きすぎてしまうんです。
症状が出やすい5つの部位と見た目の変化
食べ物のアレルギーには「症状が出やすい場所」があります。
全身に出ることもありますが、以下の5つの部位に繰り返し症状が現れる場合、食べ物のアレルギーの可能性として考えてみてください。

① 耳(耳のかゆみ・繰り返す炎症)
食べ物のアレルギーで最もよく現れる部位のひとつが「耳」です。
耳の内側の皮膚が炎症を起こし、かゆがって頭を振ったり、後ろ足で耳をかいたりします。
- 耳の内側がピンク色になる
- だんだん赤みが強くなる
- 茶色〜黒い耳垢が増える
- 耳のにおいが強くなる
耳の治療をしても何度も繰り返す場合は、食べ物が原因かもしれません。
「根本の原因」を解決しないと、薬で一時的によくなってもまた繰り返してしまいます。
② 足先・肉球まわり
「足をずっとなめている」というお悩みで動物病院を受診される方はとても多いです。
なめ続けると、毛が茶色〜赤褐色に変色してきます。
これはアレルギーによるかゆみで慢性的になめ続けている証拠です。
毛が赤茶色に変色するのは、なめ続けることでつばが毛に染み込むためです。
「最近毛が赤くなってきた」は慢性的なかゆみのサインです!
- 足の甲・指の間の毛が赤茶色に変色している
- 皮膚が赤くなっている
- 炎症が進むと皮膚が厚くなってくる
- 肉球の間が湿った状態になっている
③ お腹・股のつけ根
毛が薄くて皮膚が直接見えるお腹や股のつけ根は、変化を目で確認しやすい部位です。
薄ピンク → 赤み → 赤いブツブツ(湿疹) → 皮膚が黒っぽくなる → 皮膚が厚くなる
👆 初期(薄ピンク・赤み)のうちに気づければ、早めに対処できます。
上の方の変化が出ているときが受診のベストタイミングです。
皮膚が黒っぽくなるのは、長い間炎症が続いたサインです。
皮膚が厚くゴワゴワしてくることも、慢性化が進んでいるサインです。
どちらも早めに気づいて対処することが大切です!
④ 顔まわり(目・口・あご)
目のまわり・口のまわり・あごの下も炎症が出やすい場所です。
- 目のまわりの皮膚が赤くなる
- 涙が増えて「涙やけ」の茶色いしみが濃くなる
- 口のまわりを床にこすりつける行動が増える
- あごの下にニキビのような湿疹が出る
⑤ わきの下・ひざの裏(皮膚が折れ曲がる部分)
わきの下やひざの裏など、皮膚が折り重なって蒸れやすい部分も炎症が起きやすい場所です。
- 赤みが出る
- 皮膚が湿った状態になる
- 甘酸っぱいようなにおいがする
- かきむしりで毛が抜ける
甘酸っぱいにおいは「マラセチア」というカビの仲間が増えているサインかもしれません。
マラセチアは健康な犬の皮膚にも少しだけいますが、アレルギーなどで皮膚が弱ると増えすぎてしまいます。
医学的には「マラセチア皮膚炎」と呼ばれます。
以下の症状が続いている場合、食べ物のアレルギーの可能性があります。
当てはまる数が多いほど可能性が高まりますが、自己診断はできません。
気になる症状が続くときは獣医師に相談しましょう。
- □ 体をかく・なめる・こすりつける行動が頻繁にある
- □ 耳の炎症を繰り返している
- □ 足先の毛が赤茶色に変色している
- □ お腹・股のつけ根の皮膚が赤い・黒ずんでいる
- □ 症状が年中続いている(季節に関係ない)
- □ お腹がゆるい・下痢を繰り返している
アトピーとの見分け方
食べ物のアレルギーと症状がよく似ているのが「アトピー性皮膚炎」です。
見た目の症状が似ているので混同されやすいのですが、治療のやり方がまったく異なります。
正確に判断するためにも、違いを知っておきましょう。
アトピー性皮膚炎とは、生まれつき皮膚が外からの刺激に弱い体質の犬が、ハウスダスト・花粉・カビなどに反応して、かゆみや炎症が続く皮膚病です。
「〇〇が原因でなった」というより、「もともとそういう体質の子が、環境の影響で症状が出る」イメージです。
3つの見分けポイント

- ① 季節性:食べ物アレルギーは年中症状が出る。アトピーは季節で悪化することが多い
- ② お腹の症状:食べ物アレルギーは下痢・嘔吐を伴いやすい。アトピーは少ない
- ③ 症状が出る年齢:食べ物アレルギーは若い犬に多い。アトピーも若い犬に多いが、成犬になってからもある
両方を同時に持っていることもある
大切なのは、食べ物のアレルギーとアトピーが同時にある犬も少なくないという点です。
フードを変えても症状が完全に治まらない場合、アトピーも関わっている可能性があります。
ただし、それぞれに対処法があります。
まず食べ物のアレルギーを確認することが、改善への第一歩です。
血液検査だけでは診断できない理由
受診のときに「血液検査をしましょう」と言われることはよくあります。
先に読んでおくと、そのときに慌てず、獣医師への質問もスムーズになります。
「血液検査でどの食べ物がアレルギーか調べてもらった」という話をよく聞きます。
じつは、血液検査だけでは食べ物のアレルギーと確定診断することはできません。
これは獣医師の皮膚科学の世界では広く知られていることです。
アレルギーの血液検査は「IgE(アイジーイー)検査」と呼ばれます。
体の中にある「IgE」というたんぱく質の量を測る検査です。
ただし、この検査は参考情報としては使えますが、「これで確定!」とはなりません。
理由① 「違う結果」が出やすい
血液検査では「この食べ物に反応が出た」という結果が出ても、実際には症状と関係ない食べ物が引っかかることがよくあります。
逆に、本当にアレルギーがある食べ物なのに検査に引っかからないこともあります。
本当はアレルギーじゃないのに「アレルギーあり」と出ることを「偽陽性(ぎようせい)」、本当はアレルギーなのに「なし」と出ることを「偽陰性(ぎいんせい)」といいます。
残念ながら犬の食べ物アレルギー検査では、どちらも多く見られるんです。
理由② 血液検査はあくまで「参考」
血液検査は、次に説明する「食べ物を変えるテスト」をするときに、どの食べ物から除くか優先順位をつける参考にはなります。
ただし「この結果でアレルギーの原因が決まった」とは言えないので注意が必要です。
アレルギーなのかは「フードを変える」ことで分かる
食べ物のアレルギーを確認するための、最も信頼できる方法が「フードを変える」方法です。
「除去食試験(じょきょしょくしけん)」と言います。
今まで食べていた食材を取り除いたフードだけを与えてみて、症状が改善するかどうか確認するテストです。
正しい進め方
- 今まで食べていたフードのお肉の種類をリストアップする(チキン・牛肉・小麦など)
- リストにないお肉が1種類だけ入ったフード(鹿肉・馬肉・カンガルーなど)か、お肉を細かく分解したフードを1種類だけ選ぶ
- テスト期間中(最低8〜12週間が必要とされています)はそのフードだけを与える
- おやつ・ガム・ジャーキー・サプリ・フレーバー付きのお薬は一切与えない
- 症状の変化を週ごとに記録する

よくある失敗パターン
テストが失敗する一番の原因は「途中で別の食材が入ってしまう」ことです。
- 「少しだけ」とおやつをあげてしまう
- 家族の誰かが知らずに食べ物をあげている
- フレーバー付きのお薬・サプリを使っている
- 2〜3週間で「効果がない」と判断してやめてしまう(最低8週間は必要)
テストで使うフードの選び方・切り替え方の詳細はこちらの記事で詳しく解説しています。
→ 犬のアレルギーフードが効かない理由と正しい選び方|現役の獣医師が解説
獣医師が選ぶ|犬のアレルギー対策ドッグフードおすすめ10選
チキンNG・アレルギー原因不明・皮膚ケア・コスパ・薬膳など悩み別に10種を比較。「迷ったらコレ」の獣医師イチオシ2選も紹介しています。
悩み別おすすめフード10選を見る →食事を変えても改善しない場合に考えること
フード変更を正しく行ったのに症状が改善しない場合は、以下を考えてみましょう。
- ① テストが成立していない可能性:おやつや薬のフレーバーなど、少しでも別の食べ物が入るとテストが無効になります
- ② アトピーと同時にある:フードを変えても完全に治まらない場合、アトピーも関わっている可能性があります
- ③ 別の皮膚病が原因:かゆみの原因はアレルギー以外にも、マラセチア皮膚炎・膿皮症・ノミのアレルギーなどがあります
動物病院を受診するタイミング
- かきむしりで皮膚が傷ついて血が出ている
- 皮膚がジュクジュクしている・うみが出ている
- 急に毛が抜ける範囲が広がっている
- 元気・食欲がなくなっている
- 2週間以上自己管理を試みても改善しない
上記に当てはまらない場合でも、症状が2週間以上続いているなら一度かかりつけの動物病院に相談してみてください。
「大げさかな」と思わなくて大丈夫です。
早めに相談するほど、対処も早くなります。
よくある質問
- 食べ物のアレルギーはどんな犬種に多いですか?
-
特定の犬種に多い傾向はありますが、どんな犬種でも起こります。
トイプードル・柴犬・フレンチブルドッグ・ラブラドールレトリバーなどでよく見られます。
ただし「この犬種だから大丈夫」ということはありませんので、症状があれば犬種に関係なく受診してください。
- 子犬でも食べ物のアレルギーになりますか?
-
はい、なります。
生後6ヶ月未満での症状はまれですが、1歳未満の若い犬でも起こります。
子犬のうちから皮膚のかゆみ・耳の炎症が続く場合は、食べ物のアレルギーの可能性を早めに考えてみてください。
- 市販のアレルギー対応フードに変えれば治りますか?
-
「アレルギー対応」と書いてあるフードでも、今まで食べていたお肉(チキン・牛肉など)が入っている場合は改善しません。
大切なのは「アレルギー対応」という表示ではなく、「今まで食べたことのないお肉が1種類だけ入っているか」です。
フード選びの詳しいポイントはこちらの記事で解説しています。
獣医師が選ぶ|犬のアレルギー対策ドッグフードおすすめ10選
チキンNG・アレルギー原因不明・皮膚ケア・コスパ・薬膳など悩み別に10種を比較。「迷ったらコレ」の獣医師イチオシ2選も紹介しています。
悩み別おすすめフード10選を見る →まとめ
犬の食べ物アレルギーによる皮膚の症状についてまとめます。
- 食べ物のアレルギーは季節に関係なく年中症状が続く傾向がある
- 症状が出やすい部位は「耳・足先・お腹・顔まわり・わきの下」の5か所
- アトピーとの違いは「季節性・お腹の症状・年齢」で判断する
- 血液検査(IgE検査)だけでは確定診断できない
- 確定診断には食べ物を変えるテスト(除去食試験)が最低8〜12週間必要
- フードを変えても改善しない場合はアトピーとの合併や別の皮膚病を疑う
テストで使うフードの選び方・切り替え方の詳細はこちら
→ 犬のアレルギーフードが効かない理由と正しい選び方|現役の獣医師が解説
