犬のイボ・しこりは悪性?獣医師が教える見分け方の限界と病院に行く目安
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「体をなでていたら、イボのようなものがあった」
「皮膚の下に、コリコリしたしこりがある。悪いものだったらどうしよう」
見つけた瞬間、ドキッとしますよね。
ネットで画像を見比べるほど、かえって不安になる方も多いと思います。
動物病院で毎日皮膚の相談を受けている現役の獣医師として、皮膚科の教科書をもとに、イボ・しこりの見方と病院に行く目安をまとめました。
- イボ・しこりは見た目で良性・悪性がわかる?
- 獣医師がいちばん大事にしている「経過」の見方
- 年齢や場所でよくあるイボ・しこり
- 気をつけたい悪性のもの
- 病院に行く目安と、家で測る・撮る方法
結論:良性か悪性かは見た目では決められない。手がかりは「経過」
イボやしこりが良性か悪性かは、色や形、触った感じだけでは決められません。
犬の皮膚の悪性腫瘍でいちばん多い肥満細胞腫は、硬さも形もさまざまで、見た目では区別しにくいからです。
そこで大事になるのが、いつからあって、どう変わってきたかという「経過」です。
イボもしこりも、私は経過をいちばん大事にしています。
最近になって急に大きくなってきたのか、昔からあって変わらないのかを、まずお聞きします。
切除を考えている方には、細胞診をしっかりおすすめしています。
細胞診は、細い針でしこりの細胞を少しとって、顕微鏡で見る検査です。
多くは麻酔なしで、短い時間でできます。
イボとしこりのちがい
| イボ | しこり | |
|---|---|---|
| 見た目 | 皮膚の表面から盛り上がる | 皮膚の下にかたまりがある |
| よく見つかるとき | なでたとき・トリミングのとき | 抱っこしたとき・体を触ったとき |
| よくあるもの | 乳頭腫・組織球腫・皮脂腺腫など | 脂肪腫など |
ただ、表面に出ているか皮膚の下かだけでは、何なのかは決まりません。
かさぶたに見えて、実はしこりやマダニのこともあります(かさぶたの記事)。
犬によくある良性のイボ・しこり
教科書では、年齢やできる場所によって、多いものに傾向があるとされています。
| 名前 | 多い年齢 | 多い場所 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 乳頭腫(ウイルス性のイボ) | 2歳以下 | 顔・耳・足 | 数週〜数か月で自然に消えることが多い |
| 組織球腫 | 4歳以下に多い | 頭・耳・首・足 | 急にできる赤いドーム状。多くは自然に小さくなる |
| 毛芽腫 | 6〜9歳 | 頭・首・耳の付け根 | 毛のないドーム状(1〜2cm)。切除で治る |
| 皮脂腺腫 | 8〜13歳 | 頭・首 | 灰色〜茶色の硬いイボ |
| 脂肪腫 | 平均8〜9歳 | 足・胸・お腹 | 皮膚の下のやわらかいしこり。ゆっくり大きくなる |
| メラノサイトーマ | 中高齢 | 体のどこでも | 黒いしこり。多くは良性 |
ただし、脂肪腫に見えても、触っただけでは別の腫瘍を否定できないとされています。
「たぶん脂肪だろう」と決めつけずに、大きさの変化を見ておきましょう。
気をつけたい悪性のもの
| 名前 | 特徴 |
|---|---|
| 肥満細胞腫 | 犬の皮膚の腫瘍でいちばん多い。平均8歳ごろ。見た目はさまざまで、さわると周りが赤く腫れることがある |
| 扁平上皮癌 | 2番目に多い。日光に長く当たる、毛の薄い・色の薄い所。ただれやカリフラワー状のことも |
| 悪性黒色腫(メラノーマ) | 口の中・唇・爪の根元にできる黒いものは、悪性が多い |
| 軟部組織肉腫 | 中高齢。やや硬く、周りに根を張って動きにくい |
| 皮膚のリンパ腫 | 赤み・フケ・鼻や唇の色が抜けるなど、皮膚炎のように見えることがある |
肥満細胞腫は、教科書でも「すべて悪性の可能性があるものとして扱う」とされています。
見た目が小さくておとなしくても、油断できない腫瘍です。
肛門のまわりのしこりは、去勢していないオスに多い腫瘍のこともあります。
おしりまわりのかゆみや、しこり以外の変化は、おしり・しっぽの記事にまとめています。
病院に行く目安

- 最近になって、急に大きくなってきた
- 硬くて、皮膚の下で動かない
- 赤い・ただれる・出血する・かゆがる
- さわったあと、周りが赤く腫れる
- 口の中・唇・爪の根元・肛門のまわりにある
- 数が増えてきた・元気や食欲が落ちた
昔からあって大きさが変わらないものは、急ぐ必要がないことも多いです。
それでも一度は診てもらい、何なのかの見当をつけておくと安心です。
見つけたときに家でやること
先生がいちばん知りたいのは「経過」です。
見つけた日から、次のことを記録しておくと、診察でとても役に立ちます。

- 大きさ:定規で縦と横を測る(1円玉は直径2cm)
- 写真:定規や硬貨をそばに置いて、同じ向きで撮る
- メモ:見つけた日・場所・硬さ・動くかどうか
- 比べる:2〜4週間ごとに、同じように測って撮る
やってはいけないこと
つぶす・針で刺す・ひっぱる・薬をぬるといったことは、やめましょう。
肥満細胞腫は、さわったり刺激したりすると、周りが赤く腫れることがあります。
出血や化膿の原因にもなります。
病院での検査と、取るかどうか
病院では、まず見た目と経過を確認し、必要に応じて細胞診をします。
細胞診で手がかりがつかめることも多いですが、確定には、切り取った組織をくわしく調べる病理検査が必要なこともあります。
| 状況 | よくある方針 |
|---|---|
| 若い子で、自然に消えやすいイボ(乳頭腫・組織球腫など) | 経過を見ることが多い |
| 昔からあって変わらない、良性が疑われるもの | 大きさを記録しながら様子を見ることも |
| 急に大きくなる・悪性が疑われる・出血する | 細胞診や切除を考える |
| 生活のじゃまになる(目・口・足先など) | 良性でも切除を考える |
取るかどうかは、検査の結果と、年齢や体の状態をあわせて、先生と相談して決めます。
切除を考えるときは、手術の前に細胞診で何なのかを調べておくと、取る範囲などの計画が立てやすくなります。
よくある質問
- 写真を見比べれば、良性か悪性かわかりますか?
-
わかりません。
同じ見た目でも、良性のことも悪性のこともあります。
写真は、見比べるより、経過を記録するために使うのがおすすめです。
- 痛がらないしこりなら、放っておいて大丈夫ですか?
-
痛みがないことは、良性の証拠にはなりません。
大きさの変化を記録し、一度は病院で診てもらいましょう。
- イボは自然に消えますか?
-
若い子のウイルス性のイボや組織球腫は、自然に小さくなることが多いです。
シニアの子のイボやしこりは、消えないものも多いので、経過を見てもらいましょう。
- イボに効くサプリメントはありますか?
-
サプリメントでイボやしこりが消えると確かめられたものはありません。
気になるときは、先生に相談してください。
- 高齢でも手術はできますか?
-
年齢だけで決まるわけではありません。
血液検査などで体の状態を確かめ、しこりの種類や大きさとあわせて判断します。
まとめ|イボ・しこりは「経過を記録して、一度は診てもらう」
- 良性か悪性かは、見た目や触った感じだけでは決められない
- 手がかりは経過。最近大きくなったのか、昔から変わらないのか
- 急に大きくなる・硬くて動かない・出血する・口や爪の根元にあるときは早めに受診
- 家では、測る・撮る・メモする。つぶしたり、いじったりしない
- 切除を考えるなら、細胞診で何なのかを調べてから
※この記事は一般的な情報です。
気になる症状があるときは、かかりつけの獣医師に相談してください。
📚 参考文献
・村山信雄 監修(2019)『伴侶動物の皮膚科・耳科診療』緑書房
