犬がお尻をなめる・かゆがる原因|肛門腺としっぽの付け根の赤みを獣医師が解説
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「床にお尻をこすりつけて歩いている」
「しっぽの付け根ばかりなめて、毛が薄くなってきた」
見ていて心配になるけれど、場所が場所だけに、よく見たことがない方も多いと思います。
おしりとしっぽのトラブルは、どこを、どんなふうに気にしているかで、原因がかなり絞れます。
動物病院で毎日皮膚の相談を受けている現役の獣医師として、皮膚科の教科書をもとに、場所ごとの原因と病院に行く目安をまとめました。
- お尻をこする・なめるときに多い原因(肛門腺・アレルギー・おなかの虫)
- しっぽの付け根が赤い・かゆいときに、まず疑うこと
- かゆくないのに、しっぽの毛が抜けるとき
- おしりのまわりのしこり
- 病院に行く目安と、家でやってはいけないこと
結論:おしり・しっぽは「場所」と「しぐさ」で原因が絞れる

おしりのトラブルは、まず「どこを」「どうしているか」を見ることから始まります。
お尻を床にこする・なめるなら肛門のまわり、しっぽの付け根をかじるならノミを、まず疑います。
おしりを気にしている子が来たときは、まず、お尻を床にこすりつけるようなしぐさがないかを確認します。
こするしぐさがあるかどうかで、肛門のまわりに原因があるのかを考えるからです。
| 場所・しぐさ | まず考える原因 |
|---|---|
| お尻を床にこする・なめる | 肛門腺のつまり・炎症、食べ物アレルギー、マラセチア、おなかの虫 |
| しっぽの付け根・腰が赤い・かゆい | ノミアレルギー、マラセチア |
| かゆくないのに、しっぽの毛が抜ける | 尾腺のトラブル、甲状腺などホルモンの病気 |
| おしりのまわりのしこり | 肛門周囲腺腫などの腫瘍 |
お尻を床にこする・なめるとき
お尻を床にこすりつけて歩くしぐさは、肛門のまわりがかゆい、または違和感があるサインです。
肛門腺(肛門のう)がたまっている・炎症
肛門腺は、肛門の左右、時計の4時と8時の位置にある小さな袋です。
においの強い分泌液がたまっていて、ふつうはうんちと一緒に少しずつ出ます。
うまく出ずにたまると、違和感からお尻をこすったり、なめたりします。
たまったままにすると、炎症を起こしたり(肛門嚢炎)、袋が破れたり(肛門腺の破裂)することがあります。
- お尻を床にこする・しきりになめる
- 肛門の横(4時・8時)が赤い・腫れている
- お尻のにおいが急に強くなった
- うんちのときに痛がる・お尻を触られるのを嫌がる
- 肛門の横に穴があいて、血や膿が出ている(破裂)
食べ物アレルギー
食べ物アレルギーでは、お尻のまわりがかゆくなり、床にこすることがあります。
目や口のまわり、耳、わき、内もも、足先にも出やすいのが特徴です。
原因を毎日食べているので、季節に関係なく一年中かゆいのも手がかりです。
くわしくは、食べ物アレルギーが出やすい場所の記事にまとめています。
マラセチア
マラセチアは、皮脂をえさにする酵母菌で、肛門のまわりにもすんでいます。
皮膚が重なって蒸れやすい場所で増えやすく、ベタつきやにおいが出ます。
マラセチア皮膚炎の記事もあわせて読んでみてください。
おなかの虫(瓜実条虫)
瓜実条虫というおなかの虫がいると、お尻がむずがゆくなり、こすることがあります。
うんちやお尻のまわりに、白い米粒のようなもの(虫の体の一部)がついていたら要注意です。
この虫は、ノミを飲みこむことでうつります。
おなかの虫が見つかったら、ノミの予防もあわせて見直しましょう。
しっぽの付け根・腰が赤い・かゆいとき
しっぽの付け根や腰をかゆがるときに、まず疑うのがノミアレルギーです。
ノミアレルギー
ノミアレルギーは、ノミの唾液に体が過敏に反応して起こる皮膚炎です。
ノミが1匹でも、強いかゆみが出ることがあります。
腰、背中、しっぽ、脇腹、陰部に出やすく、初夏から初冬に増えます。
前足をトウモロコシのようにかじるしぐさが見られることもあります。
教科書では、しっぽのかゆみは、ノミアレルギー以外ではあまり見られないとされています。
反対に、アトピーでは腰や背中はかゆくなりにくいのが特徴です。
| かゆい場所 | 多い原因 |
|---|---|
| 腰・背中・しっぽの付け根 | ノミアレルギー |
| お腹・わき・足先・顔 | アトピー・食べ物アレルギー |
| お尻のまわり・陰部 | 食べ物アレルギー・肛門腺・ノミアレルギー |
「ノミなんて見たことがない」ときの確かめ方
ノミアレルギーの子でも、ノミそのものは見つからないことがよくあります。
そんなときは、ノミのフンを探してみましょう。

ノミのフンは黒い砂粒のようで、血液でできているので、ぬらすと赤茶色ににじみます。
見つからなくても、ノミアレルギーを否定はできません。
市販のノミとり首輪やシャンプーだけでは、予防は完全ではありません。
ノミの駆除をしないまま、かゆみ止めだけを続けると、かえって悪くなることがあります。
同居の猫がいれば、猫も一緒に駆除する必要があります。
かき壊しに注意
しっぽの付け根は、かじったりなめたりしやすい場所です。
かき壊すと、急に広がるジュクジュクした皮膚炎(ホットスポット)や、かさぶたができることがあります。
かゆくないのに、しっぽの毛が抜けるとき
かゆがっていないのに、しっぽの毛が薄くなるときは、別の原因を考えます。
| 原因 | 特徴 |
|---|---|
| 尾腺のトラブル | しっぽの付け根の上側にある皮脂の多い場所。去勢していないオスで、脂っぽくなり毛が抜けやすい |
| 甲状腺機能低下症 | しっぽの毛が抜けて、ネズミのしっぽのようになる(ラットテイル)。鼻すじの脱毛、太る、元気がないことも |
| そのほかのホルモンの病気 | しっぽ・太ももの後ろ・首から毛が抜け始め、体の広い範囲に広がる |
| しっぽの先の血のめぐり | しっぽの先がえぐれる・かさぶたになる。寒さや、薬の反応のことも |
ホルモンの病気は、皮膚だけでなく体全体の病気です。
毛が抜けるほかに、太ってきた、元気がない、水をよく飲むなどの変化があれば、早めに相談しましょう。
おしりのまわりのしこり
肛門のまわりやしっぽの付け根のしこりで多いのが、肛門周囲腺腫です。
8〜13歳の、去勢していないオスに多く、男性ホルモンが関わっています。
まれに、肛門腺の袋に悪性の腫瘍ができ、うんちが出にくくなることもあります。
しこりは、見た目だけでは良性か悪性かを決められません。
見つけたときの記録のしかたは、イボ・しこりの記事にまとめています。
病院に行く目安

- 肛門の横が赤く腫れている・触ると痛がる
- 肛門の横から血や膿が出ている(破裂していることも)
- うんちが出にくい・うんちのときに痛がる
- おしりのまわりやしっぽの付け根にしこりがある
- 1週間以上、毎日お尻をこする・なめる
- しっぽの付け根がハゲて、かゆがる(人もかゆいときはノミも)
家でできること・やってはいけないこと
家でできること
- どこを、どんなしぐさで気にしているかをメモする(動画もおすすめ)
- ノミ予防の薬の名前と、最後に使った日を確かめる
- くしと白い紙で、ノミのフンがないか見る
- うんちやお尻に、白い米粒のようなものがないか見る
- なめ壊しがひどいときは、エリザベスカラーで守る
肛門腺しぼりは病院やトリマーに
肛門腺しぼりは、ご家庭でできる方もいると思います。
ただ、やり方によっては、逆に破裂させてしまう危険もあります。
病院やトリマーさんにまかせたほうが安心です。
たまりやすさには個体差があるので、どのくらいの間隔でしぼるとよいかは、先生やトリマーさんに相談しましょう。
トリミングのたびにしぼってもらうのも、ひとつの方法です。
やってはいけないこと
人用のかゆみ止めや塗り薬を、お尻にぬらないでください。
なめてしまううえに、原因によっては悪化することがあります。
肛門の横の腫れを、自分で押したりつぶしたりするのもやめましょう。
よくある質問
- 肛門腺は、家でしぼったほうがいいですか?
-
慣れていないうちは、病院やトリマーさんにまかせるのがおすすめです。
強く押しすぎると、袋を傷つけたり、破裂させてしまうことがあります。
- 肛門腺は、どのくらいの間隔でしぼればいいですか?
-
たまりやすさは犬によって違います。
トリミングのたびにしぼってもらい、お尻をこするしぐさが増えたら早めに相談しましょう。
- ノミを見たことがないのに、ノミアレルギーになりますか?
-
なります。
ノミアレルギーの子は、ノミが少なくても強いかゆみが出るので、ノミそのものは見つからないことがよくあります。
- お尻をこするのは、様子を見ていても大丈夫ですか?
-
1〜2回だけで、そのあとケロッとしているなら様子を見てもよいことが多いです。
何日も続く、腫れや出血がある、うんちのときに痛がるときは受診しましょう。
- 去勢したら、しっぽの付け根の脱毛はよくなりますか?
-
去勢していないオスの尾腺のトラブルや、肛門周囲腺腫は、男性ホルモンが関わっています。
去勢がすすめられることもあるので、先生と相談してください。
まとめ|おしり・しっぽは「どこを、どうしているか」をまず見る
- お尻を床にこする・なめるなら、肛門腺・食べ物アレルギー・おなかの虫を考える
- しっぽの付け根や腰のかゆみは、まずノミアレルギーを疑う
- ノミが見えなくても、くしと白い紙でフンを確かめられる
- かゆくないのにしっぽの毛が抜けるなら、尾腺やホルモンの病気も
- 肛門腺しぼりは、破裂の危険もあるので病院やトリマーさんに
※この記事は一般的な情報です。
気になる症状があるときは、かかりつけの獣医師に相談してください。
📚 参考文献
・伊従慶太(2018)『獣医皮膚科専門医が教える 犬のスキンケア パーフェクトガイド』interzoo
・村山信雄 監修(2019)『伴侶動物の皮膚科・耳科診療』緑書房
