犬のかゆみ止め4種の違いを獣医師が比較|アポキル・ゼンレリア・サイトポイント・ステロイド
「この薬、ずっと続けていいのかな…」
「やめたら2日で、またカイカイが始まった…」
かゆみ止めを続けながら、こんなふうに迷っていませんか?
いまの犬のかゆみ止めは、「どれが強いか」より「その子に合うか」で選ぶ時代です。
そして、どの薬もかゆみを止める薬で、原因を治す薬ではありません。
動物病院で毎日皮膚の相談を受けている現役の獣医師として、次の3つにお答えします。
- アポキル・ゼンレリア・サイトポイント・ステロイドの違い
- 「ずっと続けて大丈夫?」「やめたらまたかゆい」への答え
- 人間用の薬や、ネット通販の薬を使っていいか
犬のかゆみ止め4種類を一覧で比較
動物病院でよく使われるかゆみ止めは、おもにこの4つです。

使えない子の条件や注意点は、下の表にまとめました。
※スマホでは表を横にスクロールできます →
| 薬の名前 | 使い方 | 使えない・注意したい子 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| ステロイド | 飲み薬・塗り薬など | 長く続けるときは副作用に注意 | 安い |
| アポキル | 最初の最長2週間は1日2回、その後1日1回 | 1歳未満・3kg未満は使えない | 中〜高め |
| ゼンレリア | 最初から1日1回 | 1歳未満・3kg未満は使えない | 中〜高め |
| サイトポイント | 月1回、動物病院で注射 | 1.5kg未満は使えない | 体重で変わる |
※条件は動物用医薬品の承認内容にもとづきます。費用は病院や体重で大きく変わります。
どれを選ぶかは、かゆみの強さ・年齢・持病・通院のしやすさを見て、先生と決めていきます。
それぞれの薬の得意なことと、気をつけること
① ステロイド|安くてよく効く、昔からの薬
ステロイドは、かゆみと一緒に赤みや腫れもおさえる薬です。
効き目が早く費用も安いので、かゆみがひどいときの心強い味方です。
短い期間、決められた量を使うぶんには、こわがりすぎなくて大丈夫です。
- 水をたくさん飲み、おしっこが増える
- 食欲が増えて太りやすくなる
- 皮膚が薄くなる、毛が抜ける
- 細菌の感染症にかかりやすくなる
副作用が出たときの対応や、やめ方・減らし方は、犬のステロイドの副作用の記事でくわしく解説しています。
長く使っていた場合は、自己判断で急にやめず、先生の指示で少しずつ減らします。
② アポキル|ステロイドではない、飲むかゆみ止め
アポキルは、かゆみの信号を止める飲み薬です。
副作用や、長く飲むときの注意点は、アポキルの副作用の記事でくわしく解説しています。
よく「ステロイドですか?」と聞かれますが、まったく別の薬です。
最初の最長2週間は1日2回、その後は1日1回に減らします。
- 1歳未満・体重3kg未満の子には使えない
- 使う前に、細菌・カビ・ダニの感染がないか確かめる
- 長く続けるときは、定期的に血液検査をする
- 一時的に嘔吐や下痢が出ることがある
③ ゼンレリア|最初から1日1回の、新しい飲み薬
ゼンレリアは、アポキルと同じ仲間の新しい飲み薬です。
いちばんの違いは、飲み始めから1日1回でよいことです。
どちらがよく効くかは、子によって違います。
アポキルで効きが足りなかった子が、ゼンレリアに切り替えて落ち着くこともあります。逆のケースもあるので、合わないと感じたら先生に相談してみてください。
子犬の初めてのワクチンでは、効きが遅れることがあると注意書きがあります。
ワクチンの予定がある場合は、先に先生に伝えておきましょう。
④ サイトポイント|月1回の注射で、かゆみの物質だけをねらう
サイトポイントは、かゆみを起こす物質だけを止める注射です。
体の免疫を広くおさえないので、高齢の子や持病のある子にも選ばれやすい薬です。
月1回の通院ですむので、薬を飲むのが苦手な子にも向いています。
- 細菌やカビの感染が残っている
- 赤みや腫れなど、炎症が強い時期
- かゆみの原因が、ねらう物質以外にもある
感染や炎症を先に落ち着かせると、効き方が変わることがあります。
効かないときの見直し方や副作用は、サイトポイントの記事でくわしく解説しています。
そのほかの選択肢
シクロスポリン(アトピカなど)は、効くまで数週間かかる、アトピーの長期管理向けの飲み薬です。
人の花粉症でおなじみの抗ヒスタミン薬は、犬のアトピーのかゆみには効果がかぎられます。
足先など、かゆい場所がしぼれているときは、塗り薬やスプレーも使います。
「ずっと続けて大丈夫?」「やめたらまたかゆい」への答え
診察室で、いちばん多いのがこの2つのご相談です。
やめるとかゆみが戻るのは、原因が残っているから
薬をやめてかゆみが戻るのは、かゆみの原因がまだ残っているからです。
とくにアトピーは、かゆくなりやすい体質そのものが続く病気です。
- かゆみが落ち着いた状態を、しばらく保てているか確かめる
- 先生と相談して、量や回数を少しずつ減らす
- 季節によって増やしたり減らしたりするのは、よくあること
- 自己判断で急にやめない
長く使うときは、定期的な血液検査で体への負担を確かめます。
検査で見守りながら、必要な最小限の量で続けるなら、上手に付き合っていける薬です。
「薬をやめたい」と相談されたら、まずは今の症状を見て決めます。かゆみがうまくコントロールできている子なら、やめる方向で少しずつ減らしてみることもあります。かゆみがあまりおさまっていない場合は、ほかの薬への切り替えを提案することが多いです。
薬を減らしやすくする「土台」づくり
薬を減らせるかどうかは、薬以外の部分をどれだけ整えられるかで変わります。

感染をくり返す子は、膿皮症をくり返す理由も参考にしてください。
スキンケアの続け方は、アトピー性皮膚炎の記事でくわしく解説しています。
食べ物の見直しで、かゆみの土台が下がる子もいる
食べ物のアレルギーが関わっている子は、フードを変えると薬に頼る量を減らせることがあります。
足先・耳・口のまわりなど、かゆい場所もヒントになります(部位ごとのサイン)。
いくつかの病院をまわっても、かゆみが治らなかったワンちゃんに、フードの切り替えを提案したことがあります。かゆみが落ち着き、ずっと続いていた嘔吐まですっきりなくなりました。すべての子が同じではありませんが、食事は見直す価値のある土台です。
ただし、フードを変えれば薬がいらなくなる、というわけではありません。
原因になりやすい食材を避けた魚系フードや分解タンパク食を、獣医師が原材料で比較しています。
愛犬に合うフードを比べてみる →人間用のかゆみ止めや、ネット通販の薬は使っていい?
人間用のかゆみ止めを、自己判断で使うのはおすすめしません。
犬は塗った場所をなめてしまいますし、成分や量も犬向けではないからです。
- アポキルやサイトポイントは、獣医師の診察と指示が必要な薬
- 偽物や品質の問題がある
- 量を間違えやすい
- 副作用が出たとき、相談できる先がない
費用が負担なときは、正直に先生に伝えてください。
薬の種類や回数を見直せることがあります。
こんなときは早めに動物病院へ

かゆみ止めを飲んでいるのに悪化する、元気や食欲が落ちたというときも、早めに相談してください。
受診のときに先生に聞いておきたい5つのこと
納得して続けられるように、次のことを聞いてみてください。
- この薬は、どのくらいの期間続ける予定ですか?
- 量や回数を減らすのは、どんな状態になったときですか?
- 血液検査は、どのくらいの間隔で受ければいいですか?
- ワクチンやほかの薬との組み合わせで、気をつけることはありますか?
- ほかのかゆみ止めと比べて、費用はどのくらい違いますか?
メモにして持っていくと、聞きもらしが減ります。
よくある質問
- アポキルはステロイドですか?
-
いいえ、ステロイドではありません。
かゆみの信号を止める、まったく別の仕組みの薬です。
- サイトポイントとアポキルは一緒に使えますか?
-
かゆみの強さや時期によって、獣医師の判断で組み合わせることがあります。
自己判断で足したり減らしたりしないでください。
- 子犬にもかゆみ止めは使えますか?
-
アポキルとゼンレリアは、1歳未満の子には使えません。
サイトポイントは年齢の制限がなく、体重1.5kg以上が対象です。
子犬のかゆみはノミや感染症が原因のことも多いので、まず原因を調べます。
- かゆみ止めの費用はどのくらいですか?
-
病院や体重で大きく変わります。
ステロイドがもっとも安く、アポキル・ゼンレリア・サイトポイントは高めになりやすい薬です。
まとめ|かゆみ止めは「原因に向き合う時間」をつくる薬
- ステロイドは安くてよく効く。長く使うときは副作用に注意し、急にやめない
- アポキルとゼンレリアは、ステロイドではない飲み薬
- サイトポイントは、月1回の注射でかゆみの物質だけをねらう
- やめるとかゆみが戻るのは、原因が残っているから
- 人間用の薬や、海外通販の薬を自己判断で使わない
食べ物の見直しから始めたい方は、アレルギー対策ドッグフードの選び方も読んでみてください。
※この記事は一般的な情報です。
薬の選び方や量は、必ずかかりつけの獣医師と相談してください。
・農林水産省 動物医薬品検査所「動物用医薬品等データベース」アポキル錠、ゼンレリア錠、サイトポイント(2026年10月確認)
・Olivry T, et al. Treatment of canine atopic dermatitis: 2015 updated guidelines from the International Committee on Allergic Diseases of Animals (ICADA). BMC Vet Res. 2015;11:210.
