犬の外耳炎を繰り返す原因|茶色い耳垢・臭いの正体を獣医師が解説
「耳掃除をして薬をつけたら治ったのに、しばらくするとまた耳がにおう…」
「茶色い耳垢がまた出てきて、もう何度目の通院だろう」
そんなふうに、繰り返す外耳炎に悩んでいませんか?
実は、外耳炎が何度も戻ってくるのは、耳の外に「外耳炎になりやすい原因」が残っているサインです。
点耳薬で治しているのは、あくまで「今起きている炎症」だけなのです。
この記事では、現役の獣医師として毎日こういった耳のトラブルを診ている立場から解説します。
「なぜ繰り返すのか」「茶色い耳垢やにおいは何のサインか」「再発を減らすには何をすればいいか」をわかりやすくまとめました。
- 外耳炎が治っても繰り返す本当の理由
- 茶色い耳垢・耳のにおいからわかる今の状態
- 外耳炎を繰り返す主な原因5つ
- 食べ物のアレルギーと外耳炎の関係
- 自宅ケアの方法・してはいけないこと
- 動物病院を受診するタイミング
外耳炎が繰り返す本当の理由
外耳炎(がいじえん)とは、耳の入り口から鼓膜までの通り道(外耳道)に炎症が起きた状態です。
動物病院では、耳の洗浄と点耳薬で治療するのが基本です。
点耳薬で増えすぎた菌が減るため、赤みやにおいはいったん落ち着きます。
ところが、菌が増えやすい「耳の土台」は、点耳薬では変わりません。
そのため薬をやめると、また菌が増えて元の状態に戻ってしまうのです。
点耳薬で治っているのは「結果」だけ
外耳炎で耳の中に増えているのは、マラセチア(皮脂を好むカビの仲間)や細菌です。
ただし、これらの菌はもともと健康な耳にも少しずつ住んでいます。
菌が悪さを始めるのは、アレルギーや蒸れなどで耳の皮膚が荒れたときです。
つまり、菌が増えたのは「結果」で、その前に必ず「きっかけ」があります。
- きっかけ(アレルギー体質・蒸れなど)で耳の皮膚が荒れる
- 荒れた皮膚でマラセチアや細菌が増える → 外耳炎になる
- 点耳薬で菌が減って、いったん治る
- きっかけが残っているので、また菌が増える → 再発
海外の調査でも、外耳炎の犬の6割以上が慢性化・再発を繰り返すタイプで、9割以上が両耳に起きていたと報告されています。
両耳に同時に出やすいのは、耳だけの問題ではなく、体質が関わっていることが多いからです。
茶色い耳垢・においでわかる耳の状態
外耳炎のタイプは、耳垢の色とにおいである程度見当がつきます。
まずは、愛犬の耳垢がどれに近いかチェックしてみてください。
なかでも多いのが、茶色くベタつく耳垢と、納豆のような発酵臭の組み合わせです。
これはマラセチアが増えているときの典型的なサインです。
マラセチアは耳の皮膚が荒れて皮脂が増えると、一気に数を増やします。
マラセチアは体の皮膚でも増え、脂っぽいフケの原因になります(犬のフケの記事)。
体の皮膚のマラセチアについては、マラセチア皮膚炎の記事にまとめています。
つまり「茶色い耳垢がまた出てきた」ときは、耳の皮膚が荒れるきっかけがまだ残っていると考えてください。
ただし、耳垢の見た目だけで原因を決めることはできません。
動物病院では耳垢を顕微鏡で調べて、菌の種類を確かめてから薬を選びます。
同じ茶色い耳垢でも、細菌が混ざっていることがあるからです。
外耳炎を繰り返す主な原因5つ
ここからは、外耳炎の「きっかけ」になる主な原因を5つ紹介します。
愛犬に当てはまりそうなものがないか、確認しながら読んでみてください。
① アレルギー体質(いちばん多い原因)
外耳炎を繰り返す原因として最も多いのが、アレルギー体質です。
アレルギーには、食べ物が原因のものと、ハウスダストや花粉が原因のアトピー性皮膚炎があります。
どちらも耳の皮膚に炎症を起こし、菌が増えやすい状態を作ります。
見落とされやすいのが、かゆみが耳だけに出ているケースです。
「足先をなめる」「お腹や脇が赤い」といった症状が重なっているなら、アレルギーの可能性はさらに高くなります。
「うちの子、耳以外にもかゆがっているかも」と感じた方へ。
食べ物のアレルギーは耳だけでなく、足先・お腹・顔まわりにもサインが出ます。
部位ごとのチェックポイントを、別記事にまとめました。

② 耳の形・耳毛(垂れ耳・耳道が細い)
垂れ耳の犬は耳の中に空気が通りにくく、蒸れやすい構造をしています。
コッカー・スパニエルやゴールデン・レトリーバーなどが代表的な犬種です。
トイ・プードルのように耳の中に毛が多い犬種も、湿気がこもりやすくなります。
耳の形は変えられなくても、蒸れを減らすケアで再発を防ぐことは十分に可能です。
③ 耳掃除のしすぎ・やり方の間違い
「きれいにしてあげたい」と毎日耳掃除をすると、かえって外耳炎を招くことがあります。
耳の中の皮膚はとても薄く、こすりすぎると目に見えない小さな傷ができるからです。
綿棒を奥まで入れると、耳垢を奥へ押し込んでしまうことも少なくありません。
正しいやり方は、このあとの自宅ケアの章で紹介します。
④ 異物・できもの(片耳だけ繰り返す場合)
いつも同じ耳だけが悪くなる場合は、少し注意が必要です。
草の種などの異物や、耳の中のポリープ(できもの)が隠れていることがあるからです。
散歩で草むらに入る犬では、草の種が耳に入り込むケースが意外と多く見られます。
片耳だけ繰り返すときは、耳の奥まで見る検査を受けてください。
⑤ ホルモンの病気など、全身の病気
甲状腺の働きが落ちる病気など、ホルモンの病気が外耳炎の背景にあることもあります。
皮膚の新陳代謝や抵抗力が落ちて、耳の中も荒れやすくなるためです。
「毛が薄くなった」「元気がない」「太りやすくなった」といった変化があれば、血液検査で調べてもらいましょう。
食べ物のアレルギーと外耳炎の関係
「耳の病気とご飯が関係あるの?」と思われた方も多いかもしれません。
実は、食べ物のアレルギーは、外耳炎として表に出やすい病気のひとつです。
食べ物のアレルギーがある犬では、繰り返す皮膚の感染症や外耳炎が代表的な症状として知られています。
皮膚で細菌が増える病気については、犬の膿皮症の記事にまとめています。
かゆみが出やすい場所も、耳・足先・お腹が中心です。
アレルギーの原因になりやすい食材
犬の食べ物のアレルギーで、原因として多く報告されているのは次の4つです。
- 牛肉
- 乳製品
- 鶏肉
- 小麦
どれも市販のドッグフードやおやつによく使われている食材ばかり。
「何年も同じフードを食べてきたから大丈夫」とは限らず、ある時からアレルギーが出ることもあります。
確かめる方法は「除去食試験」
食べ物のアレルギーは、血液検査だけでは確定できません。
確かめるには、除去食試験(じょきょしょくしけん)を行います。
除去食試験とは、原因になりそうな食材を外したフードに切り替えて、症状が落ち着くかを見る方法です。
これまで食べたことのない肉や魚を使ったフードか、アレルギーを起こしにくく加工した療法食(治療用のフード)を使います。
期間の目安は最低8週間です。
8週間続けると、食べ物のアレルギーの9割以上で症状が落ち着くとされています。
「2〜3週間で変わらないからやめる」のは、判断が早すぎます。
- 決めたフード以外のおやつ・トッピングはお休みする
- 途中でフードを変えず、最低8週間続ける
- 始める前に、かかりつけの獣医師に相談する
正直にお伝えすると、獣医師でも見た目だけで「これは食べ物のアレルギーです」と言い切ることはできません。
だからこそ、フードを切り替えて耳の変化を見ることが、いちばん確実な確かめ方になります。
フードを切り替えている間も、耳の治療は並行して続けて大丈夫です。
「アレルギーに配慮したフードって、種類が多すぎて選べない…」という声もよく聞きます。
原材料の見方と、悩み別に選んだ具体的なフードを、別記事で比べました。

自宅ケアの方法・してはいけないこと
ここでは、再発を減らすために自宅でできることをまとめました。
全部を一度に始める必要はありません。
できそうなものから1〜2個、取り入れてみてください。
✅ やってよいこと
- 薬は見た目が治っても自己判断でやめず、再診で耳の中を確認してから終える
- 耳掃除は汚れやにおいが気になるときだけ、犬用の耳洗浄液で行う
- シャンプーや水遊びのあとは、耳の入り口をタオルで押さえて水気を取る
- アレルギー体質が疑われるなら、フードを見直す
特に大切なのが、薬を最後まで使い切ることです。
赤みやにおいが消えても、耳の奥ではまだ菌が残っていることがあります。
薬をやめるタイミングは、再診で耳の中を見てもらってから決めるのが鉄則です。
耳掃除の正しいやり方
耳洗浄液を耳の中に数滴入れて、耳の付け根を外側から優しくもみます。
犬が頭をブルブルと振って出てきた汚れを、耳の入り口だけコットンで拭き取ってください。
炎症がある時期の耳掃除の回数は、かかりつけの獣医師の指示に合わせると安心です。
❌ してはいけないこと
- 綿棒で耳の奥をこする(耳垢を押し込み、皮膚を傷つける)
- 毎日のように耳掃除をする(皮膚が荒れて、かえって悪化する)
- 人間用の消毒液やアルコールを耳に使う(刺激が強く、炎症を悪化させる)
- 前回もらった点耳薬を、診察を受けずに使い回す(原因の菌が前回と違うことがある)
動物病院を受診するタイミング
- 膿のようなドロッとした耳垢が出ている
- 鼻をつくような強いにおいがする
- 耳を触ろうとすると痛がって嫌がる
- 頭がずっと片側に傾いている、ふらつく
- 耳の穴が腫れて、狭くなっているように見える
- 治療を続けても、1〜2週間で良くならない
外耳炎が長引くと、耳の穴の皮膚が分厚くなって狭くなり、薬が奥まで届きにくくなります。
さらに進むと、鼓膜の奥(中耳)まで炎症が広がることもあります。
「また外耳炎かな」と感じたそのときが、受診を考えるベストタイミングです。
「大げさかな」と思わなくて大丈夫です。
早めに相談するほど、治療もシンプルに済みやすくなります。
繰り返す外耳炎で行うことが多い検査
繰り返す外耳炎では、耳の治療と並行して「きっかけ探し」の検査を行います。
- 耳鏡検査:耳の奥や鼓膜の状態、異物やできものがないかを見る
- 耳垢の顕微鏡検査:マラセチアか細菌かを見分ける
- 細菌の培養検査:薬が効きにくいとき、効く薬を調べる
- 除去食試験:食べ物のアレルギーがあるかを確かめる
- 血液検査:ホルモンの病気が隠れていないかを調べる
「前回と同じ薬でいいのかな」と不安なときは、遠慮せずに検査の相談をしてみてください。
よくある質問
- 外耳炎は人や他の犬にうつりますか?
-
マラセチアや細菌による外耳炎が、人や他の犬にうつることはほとんどありません。
ただし耳ダニが原因の場合は、同居の犬や猫にうつるため、一緒に検査を受けてください。
- フードを変えたら、どのくらいで耳に変化が出ますか?
-
食べ物のアレルギーが原因の場合、早い子では数週間で変化が見えてきます。
ただし判断の目安は最低8週間です。
途中で良くならなくても、焦らず続けることが大切です。
- 市販の耳洗浄液を使ってもいいですか?
-
炎症がない時期のお手入れなら、犬用の耳洗浄液を使って問題ありません。
ただし赤み・痛み・強いにおいがあるときは、使う前に受診してください。
鼓膜が傷ついていると、使えない洗浄液もあるためです。
- 夏になると毎年外耳炎になるのはなぜですか?
-
湿度が高い季節は耳の中が蒸れて、マラセチアや細菌が増えやすくなります。
毎年同じ季節に繰り返す場合は、花粉などに反応するアトピー性皮膚炎が関わっていることもあるので、かかりつけの獣医師に相談してみてください。
まとめ
- 外耳炎が繰り返すのは、耳の外に「きっかけ」が残っているから
- 茶色くベタつく耳垢と発酵臭は、マラセチアが増えているサイン
- いちばん多いきっかけはアレルギー体質(食べ物・環境)
- 食べ物のアレルギーは、最低8週間の除去食試験で確かめる
- 薬は自己判断でやめない・耳掃除はやりすぎない
何度も外耳炎を繰り返すと、「またか…」と気持ちが沈んでしまいますよね。
でも、繰り返すことには必ず理由があります。
耳の治療と体質のケアを両方続けることで、通院の回数は減らせます。
愛犬が耳を気にせず過ごせる日が増えるように、できることから一つずつ始めてみてください。
耳と同じように、足先をなめて毛が茶色く変色している子はいませんか?
実はこれも、外耳炎と同じアレルギー体質から来ていることが多いサインです。

参考文献
- Saridomichelakis MN, Farmaki R, Leontides LS, Koutinas AF. Aetiology of canine otitis externa: a retrospective study of 100 cases. Vet Dermatol. 2007;18(5):341-347.
- Olivry T, Mueller RS. Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (7): signalment and cutaneous manifestations of dogs and cats with adverse food reactions. BMC Vet Res. 2019;15(1):140.
- Mueller RS, Olivry T, Prélaud P. Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (2): common food allergen sources in dogs and cats. BMC Vet Res. 2016;12:9.
- Olivry T, Mueller RS, Prélaud P. Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (1): duration of elimination diets. BMC Vet Res. 2015;11:225.
