犬のマラセチア皮膚炎|ベタベタ・においの原因と治し方を獣医師が解説
「最近、体をさわると手がベタベタする…」
「お腹や脇から、なんだか脂っぽいにおいがする…」
こんな変化に気づいていませんか?
それは、皮膚にいるカビの仲間が増えすぎる「マラセチア皮膚炎」のサインかもしれません。
マラセチア皮膚炎は、薬用シャンプーと原因へのケアで、きちんと落ち着かせられる病気です。
動物病院で毎日皮膚の相談を受けている現役の獣医師として、見分け方から治し方まで解説します。
- マラセチア皮膚炎のサインと、出やすい場所
- 放っておいていいか、治るのか
- 病院での検査と治療、治るまでの期間
- 効くシャンプーと、家での洗い方のコツ
- 人やほかの犬にうつるか
マラセチア皮膚炎とは?皮膚のカビが増えすぎる病気
マラセチアは、健康な犬の皮膚や耳にもいる、カビ(酵母)の仲間です。
ふだんは悪さをしませんが、皮脂が増えたり、皮膚のバリアが弱ったりすると一気に増えます。
増えたマラセチアが炎症を起こし、かゆみや赤みが出た状態が、マラセチア皮膚炎です。
マラセチア皮膚炎の4つのサインと、出やすい場所
初期は「なんとなくベタつく」「においが気になる」くらいの変化から始まります。

長引くと、皮膚が黒っぽく厚くなり、象の皮膚のようにゴワゴワしてきます。
- 脇の下・内股・首の下
- 口や目のまわり
- 指の間と、爪のまわり
- 耳の中
- 顔や体のしわの間
耳に出ると、黒っぽい茶色の耳垢が増え、独特のにおいがします。
耳のマラセチアについては、外耳炎をくり返す原因の記事でくわしく解説しています。
なぜ増える?原因と、なりやすい犬
マラセチアが増えるのは、たいてい「増えやすい土台」があるときです。
- アトピー性皮膚炎や、食べ物のアレルギー
- 皮脂が多くなる体質(脂漏症)
- 高温多湿の季節や、蒸れ
- ホルモンの病気(甲状腺・副腎)
- しわの多い顔や、たれた耳
とくに多いのは、アトピー性皮膚炎や食べ物のアレルギーが背景にあるケースです。
なりやすい犬種として、シーズー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、アメリカン・コッカー・スパニエル、バセット・ハウンド、ダックスフンドなどが知られています。
軽いマラセチアは、飼い主さんが気づいていないことが案外多いです。診察室でこちらから伝えると、「確かにベタついている」とおっしゃる方がたくさんいます。多少でも改善があれば、気持ちよくワンちゃんと接することができます。
マラセチア皮膚炎は放っておいていい?治る?
マラセチア皮膚炎が、自然に治ることはあまりありません。
放っておくと、かき壊したり皮膚が黒く厚くなったりして、治るまでに時間がかかります。
一方で、治療をすれば、多くの子は数週間で落ち着きます。
ただ、増えやすい土台が残っていると、季節ごとにくり返すことがあります。「治す」と「くり返さないように付き合う」の両方を考えておくと、気持ちが楽になります。
病院での検査と治療
検査は、テープで皮膚を調べるだけ
皮膚にセロハンテープやスライドガラスを当てて、顕微鏡でマラセチアの数を確かめます。
痛みはほとんどなく、その日のうちに結果がわかることが多い検査です。
治療は4つを組み合わせる
治療は、次の4つを組み合わせて進めます。

どれを選ぶかは、マラセチアが出ている広さや、原因によって変わります。
- 薬用シャンプー:カビをおさえる成分が入ったもので、週2回が目安
- 塗り薬:指の間など、狭い範囲に
- 飲み薬(カビの薬):広い範囲に出ているときや、重いときに
- 原因の治療:アトピー・食べ物のアレルギー・ホルモンの病気など
薬用シャンプーは、ミコナゾールとクロルヘキシジンを両方含むものが、とくに効果を確かめられています。
治療の期間は、3週間ほどが一つの目安です。
見た目がよくなっても、先生がよいと言うまで続けてください。
マラセチアに効くシャンプーと、家での洗い方
家でのシャンプーは、治療の中でもいちばん大事な役割です。

泡を10分ほど皮膚にのせておくことで、薬の成分がしっかり届きます。
すすぎ残しや生乾きは、かえってマラセチアが増える原因になります。
治療中は週2回が目安です。落ち着いてきたら、週1回、2週に1回と、少しずつ間隔をあけていきます。
市販の低刺激シャンプーだけでは、マラセチアを減らす力は足りません。
シャンプー選びは、動物病院で相談しましょう。
市販の塗り薬(ヒビクス軟膏など)は使っていい?
ヒビクス軟膏は、抗生物質・カビの薬・ステロイドを合わせた、犬猫用の塗り薬です。
狭い範囲の湿疹には使えますが、数週間続けて使わないよう注意書きがあります。
マラセチアは広い範囲に出ることが多いので、シャンプーが治療の中心です。
人間用の塗り薬については、膿皮症の記事でまとめています。
食べ物でマラセチアは減らせる?
「ドライフードの糖質がマラセチアのエサになる」という話を見かけますが、はっきりした根拠はありません。
マラセチアのエサは、皮膚の皮脂です。
ただ、食べ物のアレルギーが背景にある子は、フードを見直すと、増えやすい土台を減らせます。
アレルギーとフードの関係は、食べ物のアレルギーの記事を参考にしてください。
原因になりやすい食材を避けた魚系フードや、皮膚のバリアを支えるオメガ3を含むフードを、獣医師が原材料で比較しています。
愛犬に合うフードを比べてみる →こんなときは早めに動物病院へ
次のような様子があるときは、家で様子を見ずに受診してください。
- ベタつきやにおいが、急に強くなった
- かゆみで眠れない、かき壊している
- 皮膚が黒く、厚くなってきた
- シャンプーを続けても、2〜3週間よくならない
- 耳をしきりにかく、頭をふる
「においくらいで…」と思わなくて大丈夫です。
よくある質問
- マラセチアは、人やほかの犬にうつりますか?
-
もともと皮膚にいる菌が増えたものなので、健康な人や犬にうつることはほとんどありません。
ただ、免疫が弱っている人や赤ちゃんがいる家では、さわったあとに手を洗いましょう。
- どのくらいで治りますか?
-
治療を始めて2〜3週間で、ベタつきやにおいが落ち着いてくることが多いです。
治療は3週間ほどが目安で、原因が残っている子はそのあともシャンプーを続けて付き合っていきます。
- シャンプーは、いつまで続ければいいですか?
-
落ち着いたら、週1回、2週に1回と、少しずつ間隔をあけていきます。
やめるとくり返す子は、間隔をあけたまま続けることが多いです。
- 耳垢が黒いのは、マラセチアですか?
-
黒っぽい茶色でベタつく耳垢は、マラセチアが増えているときによく見られます。
ただ、耳ダニや細菌のこともあるので、耳垢を顕微鏡で調べて確かめます。
- 治療費はどのくらいかかりますか?
-
検査と薬用シャンプーが中心なら、比較的おさえられることが多いです。
飲み薬や、原因を調べる検査が必要になると、費用は増えます。
病院で目安を聞いておくと安心です。
まとめ|ベタつきとにおいは、皮膚からのサイン
- マラセチアは皮膚にいるカビの仲間で、皮脂や蒸れで増えすぎると皮膚炎になる
- ベタベタ・におい・赤みとかゆみ・黒ずみが4つのサイン
- 自然に治ることは少ないが、治療をすれば多くの子は数週間で落ち着く
- 薬用シャンプーは泡を10分おき、すすぎと乾燥をしっかり
- アレルギーなどの土台を整えると、くり返しにくくなる
かゆみ止めの薬について知りたい方は、犬のかゆみ止めの違いも読んでみてください。
※この記事は一般的な情報です。
治療の方法は、必ずかかりつけの獣医師と相談して決めてください。
📚 参考文献
・Bond R, et al. (2020). Biology, diagnosis and treatment of Malassezia dermatitis in dogs and cats: Clinical Consensus Guidelines of the World Association for Veterinary Dermatology. Vet Dermatol.
・Negre A, et al. (2009). Evidence-based veterinary dermatology: a systematic review of interventions for Malassezia dermatitis in dogs. Vet Dermatol.
・農林水産省 動物医薬品検査所「動物用医薬品等データベース」ヒビクス軟膏(2026年10月確認)
